個性を大切にするケアを広めたい

 超高齢社会では、ケアされる人とケアする人の割合が増え、誰もがケアを身近な出来事として体験することになります。ケアによって起こる様々なストレスは個人の生活だけでなく社会全体の不安にもなっていきます。その解決策として “個性を大切にするケア” を広めたいと思っています。

 ケアを必要とする人は日々変化をしていきます。身体機能の低下だけでなく、生活環境の変化、交友関係の変化に影響を受け、好みや感情も移り変わります。一方で変わらない部分もあります。『ChatterBox(チャターボックス)』アプリは、ケアされる人の個性を記録することができます。個性を大切にするケアを「情報」という側面からサポートする商品として介護施設向けに開発しています。

ChatterBoxのオリジナルアバター

 アプリを利用することで、ケアスタッフは『心のケア』に必要な基本情報(個性の情報)を確認してから業務を行うことができます。特に新規で担当する場面では多くのケアスタッフはコミュニケーションに不安を感じています。個性を知らずに関わることで心の状態を悪化させてしまう恐れがあるからです。ケアする側とケアされる側は相互に影響し合う関係にあるため、ケアする人が心に余裕を持ち、安心して仕事をしていると、ケアされる人もまた安心し癒されます。とりわけ認知症状を持った方と接する時にはとても重要なことです。

楽しい認知症ケアの暮らしを提供したい

 認知症状を持った方々は、高齢者としての変化に加え、脳の機能障害という中核症状(記憶障害)と、中核症状が原因で起こる生活上の影響(BPSD:妄想、暴言、徘徊など)という2つの課題を抱えています。そのことはケアする人のストレスにもなっています。BPSDの症状はひとりひとり違うので、症状をコントロールするためには、関わる全てのケア関係者が理解を深め、協力し合っていく必要があります。

 BPSDの症状をコントロールする上で鍵となるのがコミュニケーションの質です。
アプリ『ChatterBox』を使い、個性に関する情報を記録することで、質の高いコミュニケーションを誰でも簡単にできるようにします。症状がコントロールできればQOL(Quality Of Life)は改善し介護者のストレスも減ります。

※BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia 行動・心理症状

“人の存在感をコントロールする ” ノウハウを構築

 認知症状には記憶力や表現力の低下がありますが、逆に音、場の緊迫感、人の動きの速さ、表情等の“周囲の情報”には敏感になっていて、そのせいで不安や混乱を起こしている場合があります。その場合は“周囲の情報量”を抑えることが“良い環境づくり”の第一歩になります。

宮﨑詩子(弊社代表)による認知症コミュニケーション研修『一人を深く知る~ケアの中のキュアを探求する~』では、認知症家族介護の経験をベースに家族視点、本人視点で構成されたオリジナルの教材やグループワークを提供しています。ケアする時に使う言葉の種類や数を限定したり、動作の速度や角度を見直したり、さらに“人の存在感”そのものの情報量を抑える方法として“テレノイド”※を使ったコミュニケーションについて学べます。
「情報」という視点で、いつものケアの仕方を見直すことで、心のケアの具体的な実践ができるようになり、ケアされる人の気持ちを想像しやすくなります。

 ※大阪大学石黒浩教授が開発した遠隔操作型ロボット

ケアとテクノロジーのあぶない関係

 ケア現場はIT化が遅れている業界ですが、テクノロジーとケアの関係は実はずっと以前から存在しています。というのも過去にテクノロジーによるケアの効率化が行き過ぎた結果、スパゲッティシンドローム(身体に管がたくさん繋がれている状態)という社会問題が起きました。高度救命医療で使われるテクノロジー(人工呼吸器、経管栄養、薬物等)を「効率的なケア」に流用したことで人間の尊厳が脅かされる事態になったのです。その反省から、ケアされる人の視点に立ったケアとしてパーソン・センタード・ケア※が重視されるようになりました。例えば、経管栄養もリハビリの目的で活用すれば尊厳の回復に役立ちます。

私共はパーソン・センタード・ケアを支えるテクノロジーという発想のサービスを開発し、ケアとテクノロジーの良い関係を作ります。

※パーソン・センタード・ケアとは

 イギリスのトム・キットウッド教授(ブラッドフォード大学)が提唱した認知症ケアの理念です(認知症理解を行うためのDCMという観察手法も提唱)。認知症状を持った人の個性や人生、尊厳を重視する“その人を中心とした最善のケア”を目指します。イギリスでは高齢者サービスを行う際の国家基準、ケアの基準にもなっており、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、デンマーク、日本など、世界各国にも広がっていますが、DCM習得には時間と費用がかかるため日本国内の実施施設は限られているのが実状です。