概要

・2017年よりテレノイドを教材にした介護者向け認知症コミュニケーション研修を提供。(2020.5現在8カ所導入済)
・介護者と高齢者の会話をナビゲートする会話サポートアプリケーション『ChatterBox』を開発。2020年秋発売予定。
・『ChatterBox』のオプション機能としてアンドロイドロボット『テレノイド』を用いた遠隔面談システムを開発中。2021年提供開始予定。

テレノイドとは

石黒浩教授(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻・教授、ATRフェロー)が開発した遠隔操作型アンドロイドロボット。ミニマムデザインが特徴で、言語(音声通話)と非言語(ハグ)がミックスされている。

テレノイドのデザイン意図

外観情報を不足させることで“人の存在感“を再現している。人間の脳には不足情報を想像力で補うという特性がある。さらに、健康な状態であればポジティブに想像し、不健康な状態(うつ状態、精神疾患)であればネガティブに想像する。

背景

認知症ケアのニーズ

介護者は認知症状を持つ人への適切なケアをしたいと思っている。 認知症状を持つ人々には、脳の機能障害という中核症状(記憶障害)がある。中核症状が原因で起こる実生活上の影響(BPSD:妄想、暴言、徘徊など※)は複雑で個別性が高くコントロールが難しい。なぜなら、老化(身体の経時的変化)と社会的要素も加わるためである。認知症ケアに関するストレスの大半はBPSDに起因すると言ってよい。
※BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia 行動・心理症状

ケアへのテクノロジー介入の是非

過去の教訓、スパゲッティシンドローム

 過去にテクノロジー(人工呼吸器、経管栄養、薬物等)を用いた自律的、効率的な生命維持を主目的とするケアである“スパゲッティシンドローム”を発生させた反省がある。社会保障費高騰の温床としても問題視されており、こうした流れからの脱却が求められている。テクノロジーがケアに介入するのであれば、現在よりも高度な尊厳と効率化と自律化を実現するモデルでなければならない。

パーソン・センタード・ケア

 パーソン・センタード・ケアとはトム・キットウッド教授(ブラッドフォード大学)が提唱した認知症介護の理念であり、認知症患者の個性や人生、尊厳を重視する“その人を中心とした最善のケア”をめざすものである。彼らは、認知症理解を行うためのDCMという観察手法も提唱している。
イギリスでは高齢者サービスを行う際の国家基準、ケアの基準にもなっており、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、デンマーク、日本など、世界各国にも広がっているが、DCM習得には時間とコストがかかるため日本国内の実施施設は限られている。

宮﨑詩子のケア視点 (テレノイドケア社代表)

 認知症状を持つ人は周囲の情報を敏感に感じ取り、人の存在感もBPSDを刺激する要素となることから、BPSDのコントロールにおいて最も重要なことは外部からの情報量を調整しその人にとって快適な量に抑える“外部環境の最適化(情報量のコントロール)”であると考えている。パーソンセンタードケアの理念とも一致するものであるが、実現手法においてはテクノロジーを用い、介護者の観察スキルが一定程度でも十分な成果が出せることを目指している。

現場の抱える課題

ユーザー(介護施設経営者)が解決したいこと

 パーソンセンタードケア実践者が現場を統括し、後進の育成を行うことでケアの好循環を生み、介護者の負担を小さく、高齢者の満足を大きくさせていくモデルが、離職者を抑え採用増進・定着へと結び付く経済効率を最大化する基本モデルと言って良い。しかし、認知症高齢者の急増はパーソンセンタードケア実践者を相対的に希少化させ、ケアの質の後退を招いている。こうした状況から、多くの介護施設が介護人材の獲得難に直面している。また、現行の介護保険制度では介護職員数が減れば入所定員が制限され減収となることから職員の流出は経営難に直結する。

 テクノロジーを用いたシステムの構築によって、誰もが容易にパーソンセンタードケア実践者となれるモデルを社会実装し、旧来モデルからの転換を図る必要がある。

仮説と検証

テレノイドケア社の開発方針

“人の存在感をコントロールする ” ノウハウの構築

 弊社が取り組むモデル“テレノイドケア”では“人の存在感”のコントロールを中心テーマとしている。これまでに専用の会話伝達デバイスとして“テレノイド”(大阪大学石黒浩教授が開発した遠隔操作型ロボット)を採用し、家族介護の経験を持つ宮崎詩子(弊社代表)の知見を基にしたオリジナルの認知症ケア教材、記録手法を開発し、試験運用を実施した。パーソンセンタードケアを目指すまたは実践している施設からの評価が高く、6か所の介護施設で導入となった他、2つの臨床研究機関(グリフィス大学オーストラリア、国立精神・神経医療研究センター)にも導入された。

高評価のポイント

  • “テレノイド”は認知症の人に受け入れられる
  • 1時間以上続く強い不穏状態が10分で解決した
  • 認知症理解の教材として価値がある

実用化に向けた課題の調査

購入後の継続モニタリングによって、次の4点の重要性が明示された。

1教育コンテンツ介護者向け個別教育の実施実務経験と能力特性に応じたプログラム編成
2ソフトウエア高齢者の個別記録と共有外部環境の最適化に関する情報に特化
3ハードウエアデバイスの改良通信設定、遠隔操作の容易さ、収集データ品質
4コンサル導入現場のIT化の実状に即した構成将来的なIT化の促進も視野に入れた提案

 特に、介護現場のIT化は遅れており、職員一人につき1台の端末付与やメールアドレスの付与がない、業務中の個人スマホの利用は禁止、FAXが活躍している等々の実情がある。また、 施設ごとのばらつきが大きい。

社会実装の取り組み

テレノイドケア社のプロダクト

 パーソンセンタードケアの実践は難しいと考えている施設でも導入できるよう普及モデルの開発に取り組んでいる。とりわけ、記録アプリケーションを通じて得られたデータを分析し個人別の快適な外部情報量に関する研究開発を進めていく。根拠とケア方法の関連付けが行われれば認知症の非薬物療法確立に寄与でき、自動解析の実現にも通じると考えられるためケアの新しいアプローチへの期待が寄せられている。